批評

しかし「自然」の後にはやっぱり何も来ないであろう

1. どうも今月半ばに地震が起きてからというもの、夢心地の中で生活してるような気がしていてそういう気分が自分の書いた記事にも反映してるのかと思う。基本的に巷で今まで発表されてる論の調子は、ここでこそ日本頑張れ、今こそ日本復活だという論調が多く…

核時代の想像力、再びその意味を問い直す時

1. 昨日の記事で僕は、自然と世界が調和するポイントを知る、事後的で静かな世界観が、再び必要とされる、訪れるという趣旨を書いた。しかし、今回の災害以後のパースペクティブを考える限り、そして昨日当局から発表されたニュースとして、東京の浄水場の水…

チャイナシンドロームとホテルカリフォルニアの時代

1. チャイナ・シンドロームを見た。1979年に公開されたアメリカ映画であり、これは当時社会運動として台頭してきた原発問題をテーマにしたサスペンス映画であり、ちょうどこの映画が公開された直後にアメリカではスリーマイル島原発事故が起こったので、当時…

文学の名誉

1. 昨夜NHKのニュースを見ていたら村上春樹の『1Q84』の中国語訳が発売になったということで中国の土地では大きな文化的話題になっているという報道を見た。村上春樹は中国でも熱狂的なファン層をつかんでいる模様であるが、ニュース映像で中国人の興…

松本人志の『しんぼる』

1. 松本人志の新作『しんぼる』を見た。まず最初の数分間、あれは3分ぐらいあったのだろうか。早速ガツーンと来た。流石だな。またやってくれるなと思った。しかしこのすごさが今回の映画は二作目として何処までもつのだろうかという疑問も沸き、二作目にあ…

民主党的認識と経済の行方

民主党政権が日本で発足して、早速様々な局面において舵切りを試される事となったが、殊に経済の局面において、まず微妙な現象が起きているようだ。今、急激な円高の波が来ている。先週末のニューヨーク相場からドル円が90円台を切り80円台に突入した。現在…

中国経済の生命力について

1. 通貨の価値とは日々微妙に更新されているものだが、通貨の動きに影響を与えている外的な指標というのが、必ずどこかに存在している。通貨が何によって影響を受け、その日の変動をするのかというのは、時と場合によって異なっている。しかし通貨の性質から…

ロンドンの街と資本主義の文化

1. デイトレードをやりながら気になるポイントとは、トレードをしているあいだの間の取り方である。トレードというのは、発注と決済のタイミングの良し悪しによって、天と地にも大きく結果が分かれてくるものなので、この間の取り方というのに、どこまで我慢…

フォーマットとしての小説

ここ数年の一時期、僕は映画ばかり見ていた。といっても実際に映画を映画館に見に行くとそれなりに費用がかかるので殆どはDVDのレンタルを中心にして映画をよく見ていた時期が、ここ最近にあった。それは一つ一つの映画についてレビューを書くことによっ…

受験の歴史Ⅳ

1. 受験とは、それで一つの社会的な交換形態になっている。受験というシステムを媒介にして、いつの間にか日本人はそこで一つの立派な文化体系を作り上げていた。受験制度の存在とは、現代社会において日本人の細部にまで染み込み浸透している。日本型受験シ…

受験の歴史Ⅲ

1. 1979年に時の文部省は共通一次試験を導入した。大学入試に統一的な基準を導入するこの試みは、受験戦争の適正化と緩和化に役立つものなら意味のあるものとなっただろうが、結果的には共通一次が最初に導入されたとき、それは受験生の負担を多くの部分で圧…

受験の歴史Ⅱ

1. 日本の受験システムの不思議さとは何だろうか。まず要求されている知識の習得の仕方が、そこでしか役に立たないものであるということ。先に、日本型と呼べる受験システム一般の形について、この受験メソッドをシステムの中心において、率先的に育て、リー…

受験の歴史

1. 日本の受験制度とはなんと奇妙なものだろうかとは、日本で生きている人々であっても皆がずうっと長い間、薄々感じている事態であるのだろうが。この奇妙な学習と選別の体制とは何故出来上がったのだろうかと。そしてそこを経験したことのある殆どの人が、…

そしてゲームだけが残った

カントは、ユダヤ教の秘儀的教典であるカバラを否定している。カバラは、ユダヤ教における秘教的な伝授の体系であるが、カントは、彼の時代の霊能力者と云われたスェーデンボルグの批評として『視霊者の夢』を書きつつ、霊の存在については必ずしも否定しな…

老荘思想とポストモダニズム

道教のテキストを読んでみて驚くべきことは、それがポストモダニズムの論理そのものを既に実現していたということだ。老子によって基本理念が出来て荘子によって大成されている道家の体系である。そういえばタオイズムということで80年代にはやはりそれなり…

儒教のイデオロギー

中国で三大宗教というと、仏教、儒教、道教のことをさす。この中で最も権力としての安定性を、前近代の東洋史において保ちえたのは、儒教だった。しかし儒教のイデオロギーというのは一般に宗教というときの性質とは異なっていて、普通に宗教をイメージする…

漢文と日本語

日本の仏教の文献について改めて触れて見るとき、例えば岩波文庫などに入っている過去の時代的な文献を見ると、大抵の場合は書き下した文章で仮名を中心に語られており、古文とはいえ何とか読めるような形で今の出版物には入っているが、その多くというのは…

日本の文脈における最初の否定神学

ここ最近のことだが、道元の映画を切欠にして僕が禅の理論的著作を調べ始めたのは先月のことだった。するとそこから面白くなって日本仏教の歴史についてざっと壮観的にしばらく調べていたのだ。日本の仏教にとって本質的な展開というのは、江戸時代に入る前…

論理的なものと経験的なもの

カントというのはキリスト教社会の歴史では随分と微妙なポジションにあたっている。カントが反対しているものとは、それまでのキリスト教社会が背負ってきた、ある精神的体質である。キリスト教社会が担ってきた特徴的な思考の誤謬体質について根本的な転回…

レボリューショナリーロードからトウキョウソナタへ

昨夜近所のシネコンで『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』を見てくる。レイトである。ディカプリオとケイト・ウィンスレットが夫婦役で共演している映画で、サム・メンデス監督である。サム・メンデスの映画を見たのはこれがはじめてだ。名前は…

『SEX AND THE CITY』とは何故面白かったのか?

去年の夏頃、深夜に起きているとついつい気になって、全部終りまで見てしまうテレビドラマがあった。実はそれが『SEX AND THE CITY』だった。アメリカの連続ドラマシリーズとしてどうやら相当に有名であるらしく、僕は全く知らなかったのだが深夜に毎度やっ…

思考の場所

人がものを考えるというとき、それはどこで考えているのだろうか。人は、頭で考えているのか、心で考えているのか、心で考えるということは身体感覚としては胸で考えているように感じることが多い。日常的な事実である。正確にはそれらは脳で考えているのだ…

キリスト教と文化の力関係

ニコラス・レイの作ったイエス伝(1961年の映画『キング・オブ・キングズ』)を見ていて考えたことだが、イエスを巡る神話というのが、集団形成上の範例となり、ヨーロッパにおける文化の基本構造を作ってきたことの意味とは、どういうことなのかということ…

サンフランシスコの高みで『ONE WORLD』と叫ぶことの意味

聖火ランナーを妨害する運動が各地で起きている。サンフランシスコを聖火ランナーが走る。ゴールデンブリッジの高架には、「FREE TIBET」の横断幕が活動家によって取り付けられていた。横には「ONE WORLD ONE DREAM」という大きな文字も入っている。海峡を跨…

『自由チベット』という問題−宗教における消極的自由とは何か?

昨今のチベット問題について、敢えて斜めから見てみるべきだと思うのだが。どうだろうか?チベット問題でどうも今一つ、あそこで起きてる問題の重力圏から距離を置き身を引き剥がざるえないポイントというのがあって、チベットを地域的に、独立国家として解…

想像界の機能

例えば、ジジェクは、自我理想と理想自我の違いについて、このように定義している。 フロイトは、主体を倫理的行動に駆り立てる媒体を指すのに、三つの異なる述語を用いている。理想自我(Ideal-Ich)、自我理想(Ich-Ideal)、超自我(Uber-Ich)である。フ…

ナルシズムとプライド、そして理想自我と自我理想の違い

ラカンの用語で、理想自我と自我理想の違い、という言い方が出てくる。ある意味有名な説ではあるのだが、どうもこれをどう理解すればよいのかという段になると、実は相当難しい話なのではないかと思う。それはラカンの説明の仕方自体が、まず難しいというこ…

人は「対象a」の事について、どう説明すればよいのだろうか?

ここで忘れてはならないのは、対象aは欲望の原因であり、欲望の対象とは違うということである。欲望の対象は、たんに欲望される対象のことであるが、欲望の原因は、対象の中にあるなんらかの特徴であり、その特徴ゆえにわれわれはその対象を欲望する。それ…

映画とネットの垣根が崩れるとき

『クローバーフィールド』という映画が今月全米で公開されてヒットしているらしい。どんな映画かというと、日本のゴジラを下敷きにした怪獣映画であるみたいだ。しかしこの映画は仕掛が少々凝っている。まず肝心の怪獣の姿について、物体xとして、あるいは…

寓話という形式の意味について考え直す

最近よく重宝して参照してる本に『カフカ寓話集』という岩波文庫があるのだが、寓話、要するにallegoryかfableということだが、それが何だか僕には今までよくわかっていなかったことに気付いたのだ。寓話とは何かといえば、小話で語ること、しかもそれはよく…