ロックとはなにか

プリンスにとってレボリューションとは何だったのか?

80年代には続いてきた個別音楽史の流れがそれぞれ飽和によって繁栄を見ることになる。特にアメリカ黒人音楽の流れは続いてきた個別セクト性を失なわずにしてその最も優雅な繁栄を見ることになる。黒人音楽のセクト性とは何か。社会の中で疎外されていた人間…

ファイン・ヤング・カーニヴァルズの『Johnny Come Home』

1. ロックという表現形式がイギリスであらゆる階級を覆い尽くした頃、それが即ち80年代であったが、音楽のジャンルも多様を極めた。ニューウェイブと呼ばれる動きはロックという形式の単純化の運動を、レゲエ、スカといった原始的な形式化から再び接近してい…

ロックが発掘する倫理上の古典化−Big Audio Dynamite

イギリス人にとって左翼的なセンスとは何なのかと考える時、パンクロックの短い歴史がそこに重なる。パンクにもある種パターンがあった。それらは幾つかのパターンである。クラッシュの形に収斂した若者たちの叛乱のイメージとはその一つである。20世紀の後…

E=MC2

ミック・ジョーンズは、イギリスでパンクロックの草創期を生きた群像にあってクラッシュのギタリストだった人物だが、クラッシュの音楽がその生成とサイクルを一通り終えた後に、その史的役割を終えるようにして消失していくのとともに、ジョー・ストラマー…

25-6 (Train in vain)

それから数時間のあいだ僕らは空港の時間が来て解放されたロビーのソファを利用して、眠ったり語ったりを何度か繰り返していた。僕らの飛行機が出る時間が近づいてきて、同時にロビーは東京行きの人々で埋まってきつつあった。ソファに隣同士で疲れた身体を…

MINISTRYのアメリカ−『New World Order』

ボストンで爆弾事件があって、911以来から少し緩んでいたアメリカ合衆国の監視体制も、再び緊張を強いる関係性として復活してしまった模様である。どうやらアメリカという国では、わけのわからない身元不明の襲撃者によるテロという項目は、強迫的にそれを念…

21-4

そういえば最初の日に僕らがマジソンスクエアガーデンからCBGBまで乗った時のタクシーの運転手。彼もプエルトリカンだったと究極さんは言っていたっけ。白人というのがもはや何ら特権的ではなくなっている石と鉄の建造物で固められた街、ニューヨークと…

20-4

果たしてグラウンドゼロの亡霊というのはいるのだろうか?ここはたった三年ほど前に、三千人近い死者を一気に作り出した、それ自体はとても狭い区画なのである。もしそんな強い亡霊が土地に張り付いていようものなら僕は気でも狂ってしまうことだろう。しか…

11-5

1. どこの国のどこの都市にいっても人間の行動様式というのは大体同じものだろうか。ニューヨークにいながらにして客も店員も日本人しかいないという居酒屋あるいはバーの中を見渡してみて、そういう既視的な法則を感触として改めて納得しうるものだった。「…

10-4

大きな食べ応えのあるハンバーガーにポテトの添え物を、テーブルに備え付けられていたハインズのケチャップをかけて食べた。しかしこのカフェテリアだと、どうも周囲の騒ぐ声が大きすぎるのと、前にいる究極さんを見るとそろそろ彼も疲れが出始めているのが…

8-5

やっと朝になった。しかし何かが足りない気がしている。そうだ。究極Q太郎が帰ってくるだろう。寂しい部屋の中にずっと一人で耐えていたが、朝になれば究極Q太郎が帰ってくるだろうと思っていた。そう信じていた。こちらはベッドの中からあれこれ推測する…

チャイナシンドロームとホテルカリフォルニアの時代

1. チャイナ・シンドロームを見た。1979年に公開されたアメリカ映画であり、これは当時社会運動として台頭してきた原発問題をテーマにしたサスペンス映画であり、ちょうどこの映画が公開された直後にアメリカではスリーマイル島原発事故が起こったので、当時…

7-8

ウェストリバーを見に行ったら夜景が素晴らしいですよと飯塚くんが教えてくれた。それなら一回それを見に行ってからにしよう。マンハッタンの巨大な夜景を眺めたら、僕は薬を買ってホテルに帰って寝るし、後の三人はまた何処かへと夜の街に飲みに出て行く。…

7-6

飯塚くんとはコロンビア大学近辺の地下鉄出口で待ち合わせた。究極さんがそう知らせてくれたが、ホテルのソファに腰から背中を埋めるように深く腰掛けていると、疲労の重い鉄板が頭を上から押すようにしているのを感じた。このまま体は溶けてしまって古いソ…

『TOKYO POP』−レッドウォーリアーズの赤い糸

1. 80年代の頃東京にあった左翼というのは、思えば今ある再建されたといえるような形と、それ以前の左翼を接続する在り方において、礎の萌芽みたいなものが、そういう場所に訪れたとき見え隠れしていたようなものである。今から思えばあの時のあれがその後こ…

Joy Divisionの『Dead Souls』

1. またナイン・インチ・ネイルズが興味深い曲をカバーしているものだ。それは、ジョイ・ディヴィジョンの『Dead Souls』である。ジョイ・ディヴィジョンの影響関係とは広く深いが、ここでは80年代前半にイギリスの前衛的バンドとして活躍したバウハウスのヴ…

ゲイリー・ニューマン再評価の流れについて

1. ゲイリー・ニューマンは、70年代後半のロンドンの音楽シーンにおいて頭角を現し、チューブウェイアーミーというバンドでアルバムを発表した後に、ゲイリーニューマンのソロの名前で以後音楽活動が定着する。最もヒットしたのは、1979年に発表されたシング…

4-2

廃墟のような都市空間に降り立っていることの、ある種爽快なほどに研ぎ澄まされた意識というのは、僕が中高生の時に聞いていたある種の音楽にも繋がる。ニューヨーク的な、或いはヨーロッパ的な大都市のイメージというのはきっとその頃から変わっていない。…

3-2

三月の雪降るマンハッタンでは、冷えきった環境がずっと続き店の中に入ってやっと暖かくなる。CBGBのカウンターに座って寛ぎ、酒のカクテルを頼みほっとして、そういえばしばらく前から尿意をもっていて我慢していたのを思い出した。小便したいと思っていた…

3-1

CBGBの中に入ったとき店はまだ始まったばかりだった。店内の暗くした照明の下で、まだスタッフたちが忙しなく店の中の細かい調整で動いていた。男性スタッフが椅子の位置を変えていたりテーブルを拭いていたりオーディオシステムを調整していたり、女性スタ…

2-5

タクシーが大通りを流している都市の風景に目を遣った。夜の街は生きていた。ビルの中、店舗の中から漏れ出てくる光の彩がこの街の漠然とした全体的な生命力を示していた。ロックな気分というのはそのまんまニューヨークに於ける夜の気分に折り重なるときっ…

1-1

冬の終わり同時に春の始まりに当たるまだ寒い時期で、しかし時折先取りしたような陽気が訪れてはまたすぐ倍返しするように極端に寒くなるという日が繰り返すような季節だったが、三月中旬に究極Q太郎とニューヨークへ行ったときの話だ。あれは2004年の出来…

怖い女のひとについて

1. どうやら外に出て空気の気配を感じてみると夏も終わっていく模様だが、夏というと逆に冷んやりとする経験のほうがリアリティを持つというものである。夏の経験というのはただ楽しかったでは済まされぬものを持つほうが、人にとってはむしろ現実的な認識を…

水道橋のボヘミアンラプソディー

5月の3日に、エックスのライブが終了した後ドームから水道橋の駅前まで帰る人々の足並みに混じって流れていった。ドームから長くて広々とした通路は延々と続きゆっくりとライブの興奮を湛えながら人の波が移動を続けている。飯田橋から神田方面へ抜ける大き…

ロックと人格性Ⅲ

1. 孔子的に云うと、礼のない者は相手にしないでよいという。礼のない者は門前払いにせよとは、元を質していけば儒家的な物の考え方なのだ。即ち他者を排除する条件とは社会的礼の有無によるものとされる。礼という抽象的な大義名分を基準にしながら、他者の…

ロックと人格性Ⅱ

1. ロックにおいて、音楽の内容が人格のイメージに結び付くとは、どういう意味があるのだろうか。特にポピュラー音楽の場合、音楽と人格の統合したイメージによって、商品のパッケージが成立するというものであることが多い。80年に起きた象徴的事件として、…

ロックと人格性

今月の2日に、忌野清志郎の命日とhideの命日は奇しくも同じ日に重なったものだ。しかし清志郎の体現するロックと、hideの体現しているロックとでは、世代的に、同じ日本の土壌であっても、相当の開きがある。日本の初期的ロック形態と、その成熟的な形態と…

(X=)JAPAN精神分析Ⅱ

1.5月3日の夕暮れに東京ドームの中に入り、エックスのステージの巨大セットを眺めながら会場の全体を見渡し考えた。しかし彼らもよく、千葉の館山から出てきてここまで大きくなって出世したのだなと。デビューになる以前に、ヨシキは元気が出るテレビで紹介…

(X=)JAPAN精神分析

1. 今月の3日はよく晴れた初夏のいい日だったが東京ドームに行っていた。マイミクさんがまたライブに招待してくれたからだ。こんどはX-JAPANのライブである。御蔭で噂には聞くところのエックスのライブを初めて体験することができた。調度よい気温の心地よ…

イギー・ポップにはなれなかった草なぎ君に捧ぐ

草なぎ君が、深夜に公園で全裸でいるところを逮捕された。酔っ払っていた草なぎ君は、裸で何が悪い?と警官に噛み付いた模様である。なぜ突然、人は全裸になりたがるのだろうか。草なぎ君の性格は、テレビで見るだけだが、温和で理性的で、自己抑制的な性格…