2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

9-5

アートン校という場所だが、専門学校か予備校というのが相応しいような手頃な大きさの古いビルだった。ただ学生達や教員達のざわめきから漏れる息吹をそこで感じれば、その一角が異様にエネルギッシュな精気に満ちた場所だというにおいも感じ取れるだろう。…

9-4

地下鉄を軽く短時間で幾つか乗り継いだらアートン校の場所についた。それは、マンハッタンの慌ただしい一角でビジネスライクな街の真ん中にあるような場所に建っているビルディングだった。地下鉄の出口から上がっていくと出てきた所にちょうど大学の校舎が…

9-3

飯塚くんが待っているというニューヨーク市立大学の分校であるアートン校という場所へ向かった。途中、両側に商店の多く立ち並ぶ古くから続くストリートのような所を歩いていたら、表にコートやジャンパーの売り物を並べている衣料品店があった。路上の方に…

9-2

究極さんが今日の予定を話してくれた。「まず。一つは、飯塚くんがかつて留学していたニューヨーク市立大学の校舎があるアートン校というところに遊びに行こうということ」 「へー。」 「そして今日はアイリッシュ系移民たちの伝統的祭りであるセントパトリ…

9-1

ニューヨークは重い天気の午後になっていた。リトルイタリーと呼ばれる地域を歩いていた。ニューヨーク市の天候なら朝は少し晴れていたようだがまだ不安定な模様であり、濃密な曇り空が上から降りてきて立ち込めていた。地図ではこの辺がリトルイタリーとい…

8-5

やっと朝になった。しかし何かが足りない気がしている。そうだ。究極Q太郎が帰ってくるだろう。寂しい部屋の中にずっと一人で耐えていたが、朝になれば究極Q太郎が帰ってくるだろうと思っていた。そう信じていた。こちらはベッドの中からあれこれ推測する…

8-4

また目が覚めたけれどもホテルの室内はもう明るくなっていた。古い木枠にガラスを張った重たい窓からは日の光が差し込んでいる。しかし目を開けても相変わらずこの室内には何もないことが確認されるのみだ。特に何の感慨も起きないが寂しい三月の朝には違い…