2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

Dire Straits=ダイアストレイツの『悲しきサルタン』−ロンドンタウンの、祭りの後で

1978年、ロンドンから出てきたバンドはレトロスペクティブなブルースを、控え目で地味な音で奏でながら一躍脚光を浴びた。1968年には既に明確な形式が確立されて認知されていたといえるロックというジャンルの形式は、そこの10年間でもう爛熟を迎え、一回突…

グッバイ、鶴巻町−精子ちり紙で拭く

左翼的思弁性の形而上世界に対して、そこに本当に唯物的なリアリティが入ってきてしまうことは必ずしも幸福な事態とはいえない。形而上的思弁性の維持のためには、現在のリアリティをある意味、見ないですましてしまえる思弁性のシステム、常に未来の革命、…

奴の悪循環

鎌田哲哉は『構想と批判』におけるスガ秀実論において、「奴の悪循環」というポイントからスガ的批評の特徴を論じている。スガ的なロジックの性質とは、まず批判すべき問題となっている対象の論理構造内において、そこでは何が「内−外」の分割として組み立て…

白紙の散乱としての68年革命的症候群

映画「レフトアローン」にとって最も核心的な問題構成にあたる部分とは、鎌田哲哉とスガ秀実との対談にある次のような部分であるのだろう。 鎌田「坂口安吾は「イノチガケ」や何かで、「穴つるし」というキリスト教を弾圧する技術に何度も言及しています。つ…

アンダーグラウンド

津村喬らによって70年を境とする頃に作り上げられた左翼活動のスタイルとは(それは早稲田大の出来事が中心的な舞台になっているといってよい)、そのまま今のノンセクト・ラディカルと呼ばれる左翼のあり方まで連続性をもっている。彼らがこの時期に作り上…

身体論的支配の構図

山間部の温泉町の空は灰色で雨が降っている。車のフロントガラスに降りかかる雫をワイパーが小刻みに拭取りながら、陰鬱な空の色をフィルムが捉えつづける。草津の温泉町で昔、名を馳せた一人の活動家が気功の医院を営んでいる。彼こそは時代的な闘争がもっ…

真理を告げる嘘のチャイム

戦後のヒューマニズムは虚偽や暴力やといったものの責任を、人間性の内部にではなく、外部の制度に見出そうとしていた。本来的に善なるものとしての人間性を抑圧するのが制度であるという見方がひろく普及していた。その結果人々は、自らの善性を証すために…

解釈としての『人間的な、余りに人間的な』

西部邁は部屋の中で、スガ秀実を前にして親切に自分の過去を語っている。西部はスガを前にして語りながら、同時に嬉しそうな感じだ。若い頃の左翼的体験を前提として、結果的に「保守」という概念を見出したという西部邁の自説である。社会は本質的には変わ…