帝国とその想像界

中南米におけるイメージと論理

ゲバラとは、ただイメージの人である。決してそれは論理構造ではありえなかった。ゲバラの語ったという中途半端な言葉の数々とは残っている。そして閑散とした国連の議席で演説したゲバラの映像など。しかし論理でいかに精緻に説得を試みようと、中南米とい…

「ゲバラ=イメージ」の支配を乗り越えるために

さっき近所のシネコンのレイトにて『チェ・28歳の革命』を見てきた。チェ・ゲバラの伝記をソダーバーグ監督が撮ったということで最近話題になっていた映画だ。歴史的な事件の当事者が死んでしばらく時間がたつとそれが神話化される。社会にはそのような神話…

「運動」が自分自身を浄化するとき

日曜日の深夜に、外山恒一と松本哉の出演したラジオを聴いた。テーマは「運動」という事で、社会運動の在り方における現在的な位相というものが、どういうものになっているのか、何処まで来ているのかを知る上で、決して啓蒙的とは言い難いとしても、かなり…

資本と国家

1. 新しい帝国の概念というのをネットワーク型権力の構成だと捉える。帝国が単なる帝国主義と異なるのは、帝国主義が特定の国家的な表象において自己中心化された目に見えやすい形成を伴うのに対して、帝国主義からは進化したという次の形態の「帝国」とは、…

対抗の論理Ⅲ

酒井隆史は、左翼が最終的には無根拠的な根底として直面することになる次元について、次のように記述しているものだと思われる。 において徐々に中心をしめるようになりフェリックス・ガタリ、ジル・ドゥルーズたちを注目させた側面は、次のようにまとめるこ…

対抗の論理Ⅱ

1. 対抗の身振りは主体にとって何かの基準を与える。しかし、それは何に対抗する主体なのだろうか。悪に対抗する善。資本主義に対抗する共産主義。帝国に対抗するマルチチュード。資本と国家に対抗するX。・・・対抗の論理は主体にとって同時に対抗すべし敵…

対抗の論理

1. 社会運動の運営の実体というのが必ずしも左翼でなければならないという必然性はない。アメリカの例を見ればそれは明瞭である。アメリカ人は基本的に行動的な社会運動を好む。政治的意識も政治運動へのコミットメントの欲望も比較的には旺盛である。単にリ…

二つの左翼性

1. 宗教が相対的なものと化し、共産主義の信憑性も消滅した段階になって、「左翼」という概念そのものが漠然とした宗教的な機能を帯び始めた。左翼主義というのを歴史的なシステムとして捉えなおしたとき、その性質というのは二極に分化される傾向を常に有す…

左翼主義の起源Ⅱ

1. 宗教に始まる革命思想のあり方というのが、宗教批判を経て共産主義思想の中へ一大合流するに至る。そのとき任意の宗教形態Xというのは、等しく唯物論的に人類学的な形態の俎板に載せることが出来る。最初、共産主義の理念というのは、そのような科学的な…

左翼主義の起源

近代において形成された資本=ネーション=ステートというボロメオの環を、そのような基礎的な交換の形態から解明すること。そして、それらを揚棄しうるものとしてアソシエーションを見出すこと。アソシエーションとは三つのタイプの交換とは異なる、交換の…

戦争機械の帝国的配分Ⅲ

アメリカ人はハッキリさせたがる傾向を持つと同時に、しかしいつもそのハッキリさせ方によって、何か方針を間違い続けているという、パラドキシカルな性癖がある。自分の内部にある意見を自分の欲望の持ち方とともにハッキリさせようと、外向的に放出させる…

戦争機械の帝国的配分Ⅱ

世界資本主義は自ら存続するためにネーション=ステートを取り込んだが、存続するためには、さらにそれを自ら破壊することを辞さないのである。・・・ネーション=ステートは白紙から生まれたのではない。それは先行する「地」としての帝国の解体と分節化によ…

戦争機械の帝国的配分

1. マイケル・ムーアは語っている。 コロンバインの事件はきっかけにすぎない。構想自体は長い間、温めていたものだ。アメリカ人が暴力行為に走り、解決の最終手段として「力」violenceを選んでしまうのか。幼い頃から疑問だった。米国民なら皆、感じてると…

セキュリティの起源Ⅲ

1. 「ボウリング・フォー・コロンバイン」の映画において、前半部はアメリカでは何故銃の所持を禁止にできないのかという理由を、マイケル・ムーアが様々なアメリカ人の元へ取材にいくことによって、アメリカと銃の関係についてのイデオロギー的ともいえる、…

セキュリティの起源Ⅱ

「ボウリング・フォー・コロンバイン」によってこのようにアメリカの歴史が語られている。 ピューリタンはイギリスで迫害に脅えていた。彼らはそれで船に乗ってアメリカ大陸に大量に移住してきたのだ。だが新世界に到着した彼らは「野蛮人」に遭遇しまた脅え…

セキュリティの起源

自衛を身に付けることは義務である。特にそれはアメリカにとっては国民の義務である。自衛力がないこと、自分で自分の身を守ることが出来ないことは無責任にあたるのだ。・・・マイケル・ムーアは銃の使用について、普通のアメリカ人の日常生活の現場を訪ね…

『ボウリング・フォー・コロンバイン』

マイケル・ムーアは語っている。(『ボーリング・フォー・コロンバイン』DVD版に収録の監督インタビューより) この映画が焦点を当てているのは、コロンバインの事件や銃規制問題ではない。それはアメリカ社会に根ざしているもっと大きな問題点、つまり我々…

アメリカと戦争機械Ⅱ

1. アメリカは戦争機械を抑圧しない。世界の強国の権利として警察権を行使し、他国の政治とグローバルレベルのセキュリティに自分が中心に深く関与しようとするが、アメリカ自身は国内の内部にも決して戦争的なものを抑圧はしていないのだ。社会体の構成にお…

アメリカと戦争機械

1. アメリカとは国家の成り立ちの根本的なメカニズムからして、元から逃走によって生き延びている国家であった。逃走と自由の獲得を巡ってアメリカは原動力にして生きている、動いている。それがアメリカという国家の全体性にとって根幹的な部分である。だか…

アメリカと左翼の消滅

1. 60年代のヒッピーの運動の中で展開した資本主義批判とはそこで見られる傾向性として、それは人間性についての原始回帰的なプレモダン性というのを、最新の物質文明的な科学的テクノロジーと融合させることによって、新しい文化的な世界像を創造しようとい…

モダニズムと労働概念の変容

1. 酒井隆史は「労働拒否」の概念について次のような注釈をつけている。 ここは誤解が生じやすいところだと思うが、「労働の拒否」とはけっして生産性や生産活動の拒絶ではない。けっして「なにもしない」ということの肯定ではないのである。「なにもしない…

ヒッピーとアウトノミア

1. 1960年代、アメリカ社会の豊かさとはもう既に飽和的状況を迎えていたように見える。資本主義の高度化の達成によってもたらされた物質的な豊かさは、情報化とメディア化の革命的進行とも相まって、社会の高度化としては、今までの世界史的には類例を見ない…