2005-01-01から1年間の記事一覧

白紙の散乱としての68年革命的症候群

映画「レフトアローン」にとって最も核心的な問題構成にあたる部分とは、鎌田哲哉とスガ秀実との対談にある次のような部分であるのだろう。 鎌田「坂口安吾は「イノチガケ」や何かで、「穴つるし」というキリスト教を弾圧する技術に何度も言及しています。つ…

アンダーグラウンド

津村喬らによって70年を境とする頃に作り上げられた左翼活動のスタイルとは(それは早稲田大の出来事が中心的な舞台になっているといってよい)、そのまま今のノンセクト・ラディカルと呼ばれる左翼のあり方まで連続性をもっている。彼らがこの時期に作り上…

身体論的支配の構図

山間部の温泉町の空は灰色で雨が降っている。車のフロントガラスに降りかかる雫をワイパーが小刻みに拭取りながら、陰鬱な空の色をフィルムが捉えつづける。草津の温泉町で昔、名を馳せた一人の活動家が気功の医院を営んでいる。彼こそは時代的な闘争がもっ…

真理を告げる嘘のチャイム

戦後のヒューマニズムは虚偽や暴力やといったものの責任を、人間性の内部にではなく、外部の制度に見出そうとしていた。本来的に善なるものとしての人間性を抑圧するのが制度であるという見方がひろく普及していた。その結果人々は、自らの善性を証すために…

解釈としての『人間的な、余りに人間的な』

西部邁は部屋の中で、スガ秀実を前にして親切に自分の過去を語っている。西部はスガを前にして語りながら、同時に嬉しそうな感じだ。若い頃の左翼的体験を前提として、結果的に「保守」という概念を見出したという西部邁の自説である。社会は本質的には変わ…

『敵対的買収』の思想

2005年二月、日本の経済界に事件が起こった。インターネットの中から出てきた新興企業、ライブドアがニッポン放送の株の大量取得に成功したというニュースが流れた。株は時間外取引によって知らぬ間に取得されていた。ライブドアの社長、堀江貴文は記者会見…

経済闘争の本質

もちろん地域通貨を前提にした新通貨を発行したところで現実にはそれが実体的な価値をもって流通することは難しい。新しい共産主義=経済的革命の基準を地域通貨に据えたところで、その現実性というのは覚束ないものだろう。その点については岩井克人がNAMの…

経済革命とコミュニズム

柄谷行人のヴィジョンにとって、共産主義革命とはもちろん経済革命である。資本主義の進化に適応できなかった宗教が−あるいは宗教の中の宗派が−自然淘汰されて負けて終焉してきたように、共産主義の存在においてもまさにその原理があてはまる。 しかし共産主…

宗教の進化論と資本主義

近代ヨーロッパの社会では、資本主義化が合理的な歴史の進展としてシステムにとって明らかなものであるということが了解されてきたとき、そこでそれまでの社会の精神的な原理としての彼らの宗教、キリスト教の解釈の仕方においても、合理主義的で新しい切断…

廃墟としての左翼

法政大学の学生会館。もういつ当局から取り壊しになってもおかしくはない古い建物であり、学生たちによる占拠(=学生の立場からいえばそれは「自主管理」である)が為されてから相当の時間も経っているものだ。学生たちはこの市ヶ谷の学生会館がまだ建設中…

疎外論の時代

疎外論の時代とは日本では60年代のものであったということができる。疎外論は時代の流行でもあったし、認識論的なコードまでをも一時期覆ったのだ。疎外論とはその単純なわかりやすさ故に繁殖力も強かった。目の前に与えられた直接的かつ具体的なる現象につ…

主体性は強度を求めて荒野を目指す

松田政男−1933年生まれで日本の左翼現代史についてその生き証人ともいえる、活動家であり評論家であったこの人は、フィルムの中で元気な姿を見せている。もう七十を超えているこの老左翼人は、昔ならば確実に老人といわれただろう人生の境位に到達しているに…

イメージと左翼

ウォーラーステインは『反システム運動』の中で次のようにいう。 世界革命はこれまで二度あっただけである。一度は1848年に起こっている。二度目は1968年である。両方とも歴史的失敗に終わっている。両方とも世界を変化させた。両方とも計画されたものではな…

スガ秀実の『LEFT ALONE』

2005年2月にスガ秀実を扱った映画「レフトアローン」が劇場公開になった。この映画は六八年革命論というスガの自説を中心にして日本の「左翼」というイメージにまつわる作家から活動家までを彼のセレクションによって選定し、各人のインタビューを中心に構成…