シャービック

最近一日のうちの愉しみにしている事があって、それはシャービックを作ることである。昔懐かし、あのハウスのシャービックだが今でもこの商品が健在で流通していたことに僕はつい最近まで気付かなかった。コンビニでアイスを物色していたときにシャービックの完成品がアイスのボックスに出ているのを見つけて久しぶりに僕はシャービックの味を確かめてみた。昔子供の頃食べていた味と同じだった。はるか昔に持っていたはずの幸福感が蘇った。あの期待の感覚が。僕らが子供の時代に、シャービックをよく作ってもらって食べていた。おいしいので食べ過ぎると怒られた。あんまり早く食べるとあの四角い冷たさの固まりはすぐになくなってしまった。だからもったいぶって味わって食べた。子供の頃の夏の日にとって、家でシャービックを食べる瞬間というのは子供ながらに至福の時間だった。

その記憶が、コンビニで見つけたシャービックを食べて蘇ったのだ。コンビニ用のシャービックというのは限定的な店舗でしか出されていなかったみたいで、どこのコンビニでも置いてあるという品物ではないみたいだ。しかも一時期出ていたもののうちの近所ではもう見なくなったような気がする。実験的にシャービックの完成品はコンビニのボックスに売られていた模様である。昔の感動を思い出した僕は、スーパーの棚を調べてみた。スーパーの陳列棚の片隅には、今でもシャービックは売られていたのだ。シャービックの後にハウスはフルーチェを発明したので、人気はフルーチェのほうに持っていかれてしまった。それでシャービックは前線から陰にかくれてしまった。フルーチェは牛乳に混ぜるだけですぐに作れるが、シャービックは少々手間がかかる。しかし僕は、食べがいのあるのは圧倒的にシャービックだと思う。なんというかフルーチェの味では凡庸すぎるのだ。だからもうシャービック派を宣言してもいい。

シャービックは昔から、ピンクのイチゴ味とグリーンのメロン味の二つが出ていた。イチゴ味は大抵のスーパーでも置いてあるがメロン味も置いてある店は少ない。シャービックのメジャーはイチゴ味として定番になっているのだ。コンビニ用に出ていたのもイチゴである。コンビニ用の袋にはシャービックが8個入っていて126円である。自分で作る粉末の元祖シャービックは、一袋につき大体アイストレイで二皿分つまり4倍位の個数は作れると思う。これが150円、安いスーパーでは138円で売ってる。自分で作ったほうがやはり相当御得である。

袋をボウルに入れて牛乳を混ぜ、水を加えかき混ぜる。結構この粉末はうまくかき混ぜるのに手間がかかるのだ。出来れば泡立て器で混ぜたほうがいい。牛乳を全部入れても水だけで作っても実はそんなに味は変わらない。粉末のほうに充分乳分が含まれているからだ。僕は牛乳と水を半々くらいにして混ぜている。冷蔵庫に入れて30分程度で固くなったシャービックは出来上がる。ここであんまり固くなりすぎても凍ったシャービックはトレイから出しにくくなるし、まだ柔らかいシャービックもうまくない。適度な柔らかさを保った凍り具合がシャービックにとってはベストなのだ。

四角いトレイからブロックを出すとき、僕は一回フォークで周辺に刺し込んでくり抜くようにして取り出す。綺麗に四角いブロックを取り出すやり方にもコツがいるのだ。これがうまく取り出せたときは充実感もある。シャービックはもう何十年間も売られている、渋い、定番の家庭用デザートである。シャービックの四角いブロックの美しさをよく思い出してほしい。それは一つの傑作商品であった。ずっと長い間忘れていた食べ物だが、ふとしたことからまた再会してしまった。シャービックとは安定しておいしいと思いながら食べられる代物である。シンプルな美味さを改めて確認できる。