夢の見過ぎで

1.
夢の見過ぎで気分の悪くなることがあるみたいだ。現象としてあるみたいだ。



2.
横たわり、背中の裏側にわだかまっていた過去の記憶を手繰り寄せていく。そこでは悪い血が溜まっている様に記憶も溜まっている。

記憶の断片とは、睡眠中に布団の中で最も自動的にかつ正確に拾える状態になっていることに気づき、いつまでも布団の中から出ないで意識的に、身体の奥にある核へと向けて、記憶を浮かばせておいた。できるだけ身体は重たく沈ませ、できるだけ記憶は軽く無節操に遊ばせておくよう心がける。

そして寝る。ただ寝る。ひたすら寝る。季節の気温の上下に任せて。気温はこれから寒くなっていく季節の傾きの上にあるとみえ、外は冷えながら布団の中は暖かくしておくという状態が、調度そういう身体と精神の状態に、拍車をかけて流れを呼んだのだ。



3.
そしたらたくさん夢を見た模様である。一つ一つの夢は、断片化されることによって終了し、次の夢へと飛び移り、それは脈絡のないようでしかし論理的な繋がりはどうやら確実にあるようでいて、それらがからだの中で繋がりながら終わっていくのを何処かで感じていた。

一つの夢に片がついたと思った時は浄化されるときのカタルシスを感じつつ、流れにまかせ寝返りを打ちつつ、なるようにまかせていた。

しかし、最初のほうは作業が気持ちよかった気のするこの睡眠も、最後のほうでは、もうお腹いっぱいということか。何か肩の中には新しく生じた血の滞留のような凝りも感じていて、もうこれ以上夢を見たら気持ち悪くなりますという脅迫的な予感に襲われて、やっと目覚め、そして布団から起き上がった。

パソコンの電源を入れながらぼうっとしていると、もはや意味の分からない映像の断片やら風景の感触やらが交じり合い、なんともいえない飽和してる状態の悪い気分はピークに達しており、意味は分からないながらもそれら混乱した想念と気分の流れを、ぼんやりしながら落ち着かせ、沈静化していくのを待っていた。



4.
僕は手元の煙草を一本取り出し火をつけた。ふうっと煙をはいた。モニターの暗かった画面には自作パソコンに特有の起動の英数字が流れていく。暗闇の中に英数字が機械の音をたてながら凄いスピードで流れていく。これが現実のスピード?気持ちのいい位。