ツチノコと都市伝説

今日の朝から昼にかけて、テレビの報道で話題になっていたものとは、ツチノコといわれて出てきた映像だったと思うが、元ネタが如何わしいゴシップ新聞であっただけあって、どう見ても想像上の民間伝説の中にあるツチノコのイメージとその映像を結びつけることは難があり、河原で目撃されビデオカメラに収められた、少々大きめのヒルだったというのが、正直なその正体だったと思うが。テレビの番組で出す方も、そうとはわかりつつも直接言わず、口を皆で濁しながら皆で微笑みながら終わるという感じだった。ツチノコとは日本の民承伝説の中にある幻の生き物であり、幻のイメージである。ある種、口裂け女を私は見たというのとツチノコを私は見たというのとは、伝承として同様の語り口であり、形式のうちにある。何か人里から逸れたような或いは人里の中にあってもそれは、エアポケットのような孤立した状態に遭遇した時、私はそれを見た、幻のそれを見たという言い伝え方になって、それが繰り返されている。口裂け女の伝説が、70年代のものだったというのなら、その後から現在では同様の都市伝説の対象がどのような遍歴を辿って続いたのかとかは、僕は詳しくない。ツチノコの場合は相当古くから民承という形で語り継がれてきた伝説の形式であり、それが近代社会の発展以降は都市伝説という形で、再生産されながら続く、民間的な自然発生の語りの形式なのだ。

それでツチノコについて、僕は朝からちょっと調べてしまったのだが、ツチノコ自体の伝承は古く、古事記の中にはもう既に、そのような生物のことが語られている。蛇と似た感じでもあるが、胴体は短く太く、空中に飛ぶようにジャンプして移動するという、ある種獰猛なる生き物である。縄文期の土器にもそのような絵が描かれている。飛騨や長野のほうの遺跡から出ている。古事記日本書紀には、野の神、主と書かれ、江戸時代の和漢三才図解という百科全書には野槌蛇の名でツチノコの説明がある。本当にそんな生物がいたのだろうか?もし本当にいたとして、絶滅したに近いと考えられる。もしそれが本当に有り得る生態種ならば、海外にも同様の生物がいておかしくないのだろうが、海外の話で、ツチノコに相当する生物種の記録というのも別に知られていないのだと思う。海外にも似たようなものが本当にいれば、もしくは同じ様な伝説があれば、それはそれで面白いのだが。都市伝説とはいつかは消えるのだろうか?最近の都市伝説の構造がどんなになってるか、僕は全く詳しくない。都市伝説を伝承してるものとは、今では基本的に子供である。子供たちの世界で、学校で、そのような伝染の媒体になる。コックリさんというのもそうだった。伝承の主体が子供たちの世界に降りてきたのは何故だろうか。要するに、大人になってそんな話をしているものがいたら、集団としては馬鹿にされるわけで、近代社会以降では、伝承を欲望しうる主体が子供たちに限られざる得なかったという構造を作ったのだろう。