深夜に寂しき渋谷の裏側で

友人達がライブをやるというので金曜の夜、渋谷のライブハウス、青い部屋にいった。深夜から朝までやってるというので終電近い電車に乗り渋谷へ到着。青山学院の裏手で六本木通り沿いにある名前は有名なハウスである。戸川昌子がやっている店である。僕ははじめていった。零時過ぎてその地下室を降りた場所に入ると、もう人々は適当に馴染んでいた。決してそんな広くはないライブハウスだったが、なんだか懐かしくなるような空間でもあった。ちょうどよい位の決して大きくはないクラブスペースの隣にはガラス張りの部屋があって、戸川さんがいるのがわかった。しかし彼女はすぐに帰ったみたいだ。全体としては素人的なイベントの夜であり、商業的な活動をしてる人も中にはいるのだろうが、お客も内輪が集まって盛り上がっているような夜だった。バンドから演劇的なユニットから、お笑いのような漫談まであり、ストリップもありという、なんでもあり的なヴァリエーションでもって、朝までイベントは続いた。廃人餓号とあなるちゃんの絶叫型演劇ユニットで、何かギターを弾いてくれと頼まれたので、ノイズでも弾こうかと思っていたのだが、置いてあったギターの配線が複雑で、エフェクターの操作がわからず、ディレイとリバーブを極度にかけたような音で、空間を揺らすようなセッティングで、よくわからなかったのでそのまま、それっぽい音で静かに爪弾いていた。ハワイアンみたいな感じでも弾けたろうが、ブルースっぽいフレーズを残し、気が付いたら、コミュニストインターナショナルのテーマからアメリカ国家みたいなのを、ずっと弾いてしまった。

出演者は、うまい人からヘボイ人まで含めてみんな面白かったのだが、中に噂にだけは聞いていたマジカルパワーマコさんという、ギターを弾くおじさんを見て、この人はさすがにちょっと凄いなと思った。何者なのかは詳しくは知らないが、アングラの界隈では有名なオジさんみたいである。ZOさんギターを携えて、ベースとドラムだけ三人で舞台に登場したのだが、これがうまい。プロの演奏である。ジミヘンからニルヴァーナまで連なるような音で、正統派ロックをさり気なく演じてくれた。amazonにも出ているのでかつてはレーベルからレコードを出していたりもしたのだろうが、詳細は不明の人である。しかしこのオッサンは明らかにプロである。ZOさんのギターをマーシャルのアンプに繋げて大音量で弾くのだが、その音のセッティングがもう絶妙に歪ませていい音を出すので、これは相当なツワモノであるのがわかった。フェルナンデスのZOさんでもあんないい音が出せるのだ。最後に南尚とパムさんのユニットで、なんかドラム叩いてくださいよと云われ、グレッチの小柄なドラムセットに座ったのはいいものの、スティックが無かったので、手でドラムを叩いてしまった。パムさんがキーボードを弾いて南尚がテルミンを使ってノイズを出していたのだが、ドラムを手で叩くなんて余りに久しぶりで、これって実は凄い疲れるんだなと思った。

途中で三時ごろ、牛丼を食べようと思って一人で抜けたが、渋谷方面ではなく表参道方面に歩いていったら、安そうな牛丼屋なんてどこにも開いてなくて、延々と1時間くらい歩いて、元に戻ってきてしまった。深夜の人気なのない、表参道から六本木通りは相当寂しかった。これが東京という巨大な機械のラインなのかなと思えるほど、工場のパイプみたいに、道路が太く重く機械的に繋がっている有様を、孤独に延々と歩いていた。東京の真ん中の空虚というか、真空地帯みたいな感じを体験した。牛丼屋は結局見つからず、コンビニのカルビ豚丼を、ビルの軒下で食べる。帰り際、早朝の電車は渋谷から乗って、結構混んでいた、若者の朝帰りが多かったが、もう随分空気は涼しくなってきているのを肌身で実感。というか寒いくらいで、朝焼けの空も空気の冷えを反映してもう鋭いくらいに尖れていた。朝はジャンパーがちょうど良かった。150円のがぶ飲みコーヒーを東上線の中で飲んでいた。