Whiskey In The Jar -2

アイリッシュの民謡だった『Wishkey in the jar』をシンリジイがロックにして、それをメタリカがカバーしている。もともとこの曲はアイルランドでの酒場で労働者やルンプロに歌われていたわけで、シンリジイの歌詞を見ると向うの隠語で何を書いてあるのかわからないんだが、それら隠語の連なりが同時に標準的な英語として聞こえるときは別の意味を担っていて、つまり詩の列には二重の意味が埋め込まれているといった風になっている。アイルランド−ダブリンといえば、ジェイムズ・ジョイスで有名だが、要するに民謡や酒場でアウトロー達のうたう破廉恥な歌まで、駄洒落の精神とジャルゴンに満ちていたということである。

Musha ring dum a doo dum a da
Whack for my daddy-o
Whack for my daddy-o
There's whiskey in the jar-o

ここで「Whack for my daddy-o」とは「work for material」と聞こえるわけだし、「whiskey」とは同時に「wish-key」でもあるわけだ。歌の話は、拳銃を作りにいったついでに金を奪って帰ってきた。それで女を作ったが逃げられた。探しにいって男を撃ち殺した。釣りが好きな奴もいれば鳥撃ちが好きな奴もいるしビリヤードの球の音を聞くのが好きな奴もいるが、俺は本当は眠るのが好きなんだが、今はこうして刑務所にいて鎖に繋がれてる・・・というもので、遣り切れないどころか本当に徹底的に救いのない歌である。

この徹底的な救いのなさが逆に、皆で合唱すると身体的に解放させ気持ちよくさせるのだろうが、これもその国の文化である。後にピストルズからパンクといった形で表出してきた文化の、古くからあった連なりであるのだが、向うの文化、イングランドからアイリッシュスコットランドにかけて、一方にロイヤルやジェントルマンの文化がありながら、実際にはヴァイキングの時代からアングロサクソンの人々とは、いわば「金髪の野獣」であったわけで、野蛮な文化をもっていたわけである。今でも彼らの持つサッカー文化、フーリガンというのは、ヴァイキング時代からの、野蛮さへの憧れの名残りなのだろう。マンチェスター・ユナイテッドなんていうチームもあるが、あるイギリス人に会った時、あれはイングランド阪神だとか言っていた。

メタリカが歌ってるのはアメリカにおいてであるが、やっぱり絶望の中で気持ちよくなれることには、何か動物的な生成が伴うのだろう。メタリカがモデルの女達を相手にパーティーでこれを歌っている演出も、そういうショービズの世界の荒ぶれた内面を炙り出しているようで面白い。