『LITTLE WING』伝説 2

70年に発表されたアルバム『LAYLA』とは、エリック・クラプトンデュアン・オールマンツインギターによって構成されたバンド、デレク&ドミノスの僅かな活動期間に残した、たった一作のアルバムであったが、ロック史上においては、それがロックの基本スタイルを完成させたものとして画期的で金字塔的な一作となった。ある種古典的ロックとは、レイラに始まりレイラに終わる。何故すべてはこのアルバム、レイラにあるといえるのだろうか。ギターが二本前面に出て踊り続け、ヴォーカルが形式的に入り、ドラムスがあってベースがある。ジミヘンの段階からその段になって何かが進化したというのならば、音の構成がより定式化され、わかりやすく聞きやすくなり、ロックがスタンダードを持ち、社会の中の一部として定着したことを意味する、構造の一般化を示した作品であるからだろう。イギリス人としてのクラプトンが、このバンドによって、アメリカ人の白人として本場ブルースを空気として吸収して知るデュアン・オールマンとコンセプトを組んだことが、デレク&ドミノスの異様な完成度の高さと、演じられる音の異様な密度の高さを生んだのだといえる。レイラにおいて明瞭になった事態とは、もはやブルースが黒人の手から離れて、白人に独自のやり方で吸収されてしまった、それはブルースの歴史としては、もはや全く新しいタイプのジャンルを切り開いてしまったのだということにある。ジミヘンまではまだ明らかに黒人のものであったグルーブを、レイラでは完全に白人のものとして別個に完成させてしまった。以後、ブルースの基本形とは、むしろクラプトンにって確立されたものとして世界的に流通することになるのだし、それはブルースロックの姿となって、よりブルースの普遍化を促進することになった。二枚組みのアルバムが後半で終りに近づくとき、ジミヘンの演じたはずのリトルウィングが、全く違った形で、ハードに、大幅に多様化された楽曲構成として、新たに生まれ変わったのを耳にすることになる。ジミヘンのものからクラプトンのものに変わったリトルウィングによって、それが70年に幕を開くことになる、新たなるロックというジャンルを鮮明にマニフェストした事態として現われたのだ。ジミヘンのエッセンスから打って変わり、余りに白人的な一般化されたスタンダードとして。

ここに貼られたリトルウィングは、もうごく最近のもので、もはやデレク&ドミノス時代の荒々しさとは程遠く、シェリル・クロウと一緒に静かなリトル・ウィングを演じる、老クラプトンの姿がある。ここでサックスを吹いているのはデヴィッド・サンボーンである。
Eric Clapton & Sheryl Crow - Little Wing