パロディ化される名曲の精神

『悲劇』の精神といえば次に来るのは『パロディ』の精神ということだろうが・・・。パロディの精神とは笑いのことである。『Stairway to Heaven』とはかくも広く知られた名曲であるのだが、この曲をパロディ化して演じたビデオで面白いものがあった。まずはフランク・ザッパが彼のバンドでこの曲をパロディ化している。

この人ほどパロディの精神に則った上でそれを上手く実現し切った人も、ロックの世界において、またといないのではなかろうか。フランク・ザッパのもたらす笑いというのは抽象的なものである。音楽を笑い飛ばすこの人の手つきは手馴れたものである。彼は音楽について知り尽くしているので、音楽について殊更真面目になることもない。いつもクールに醒めた目線で、歴史的な音楽形式の一つ一つを批評する、そしてパロディ化することによって、大人数での参加型イベントにまで仕立て上げるのだ。

音楽がただの祝祭にすぎないことに、この人は開き直っている。それ以上の望みなど音楽に対してかけようがない。彼は音楽のしかめっ面よりも、音楽を変態化することによって変態的な人々に解放と社会への再参加を呼びかけるのだ。このようにして共同性とは再び可能なのだ。音楽におけるコミュニズムとは、まさにこれのことに他ならないのだと。現代音楽家としてのザッパを評価する人々の層は根強い。彼が音楽について考え抜いた上で、彼が音楽をかくもシュールに抽象的な集団活劇に仕立て上げたのだという事情が理解されているからだ。メロディを意味素と考えたとき、その意味の極限にまで現象学的還元を加えてステージ上に送り返すのだ。この抽象的で止め処ない多様性としての分子化された音素の束に人は触れたとき、ただその知的な抽象性の渦の中に、意味もわからずに酔いしれずにはいられないのだ。これこそ音楽の本質であり音楽の真骨頂と云わずして何だろうか?

次に、フー・ファイターズがやはり『天国への階段』をパロディ化しているのが面白い。

ハードロックの世界をパロディにして見せた『ウェインズ・ワールド』というコメディ映画があった。この映画の中で、楽器屋を訪れた際に、ギターコーナーで試奏用の椅子の前には『天国への階段禁止』という張り紙がしてあるのだ。