獲得的世界?

僕らはNY旅行の中で、友人から左翼系の一件本屋を紹介された。友人は過去にNYCUニューヨーク市立大学に留学していた経験ももつ。チェルシーの一角に大きなスペースを構えているセクトの本屋だった。「革命書店」という文字が入り口に出ている。これは日本語のつもりなんだろうか?

Revolutionary Booksという名前の本屋である。セクトというのは日本にもいろんなものがあったものだが、アメリカにはアメリカの独自の共産主義セクトがあるのだ。しかもまだ日本と同程度くらいには実在してるのだ。僕は聞いたこともない初めて知ったセクトだが、きっと活動もしてるのだろう。マオイスト系のセクトであるらしい。広い本屋だった。チェルシーの一角にこれだけの広さのスペースを占用できるなんて費用もどのくらいかかるのだろうか。しかも古い感じの本屋だった。きっと昔からやっているのだ。

だだっぴろい店内には、一定多くの種類の左翼文献が並んでいる。入り口に平積みになっているのは、このセクトの親分と見られる人物の著作だった。アナーキズムではなくてバリバリのコミュニズム系みたいだ。店の中央にはテーブルと椅子が並べられ交流できるようになっている。年寄りのおじさんがそこに座って数人でなにやら会談していた。横にはラジカセからボブディランの初期の音楽が流れている。フォークソングの頃のボブディランだ。

毛沢東全集やマルエン全集、レーニン全集が並んでいる。英語のものだ。なんだかもう時間が止まっているという感じ。この室内だけ。奥にも広いスペースが広がり、その中に雑多に本が陳列されているのだが、奥のほうはスペイン語の文献で占められている。入り口のほうではTシャツやらお土産っぽいものも並んでいた。お決まりのチェ・ゲバラTシャツも売っていた。NYには何故だかお土産屋でゲバラTシャツを置いている店が多いみたいだ。NYヤンキースのキャップなんかの横にゲバラTシャツを置いてる店にも僕は他で遭遇した。

アナーキズムの文献から、アルチュセールフーコーネグリに至るまで、一定の種類は揃えて置いてある。しかし一応中心はマオイズム系の店みたいだ。店の中には何人か若い人たちも動き回っていた。積極的に案内や話し掛けにいき、半分はオルグの役割もおっているのだろう。日本の左翼の景色ともそういう点はなんら変わらない。同じもものだ。

中国語の商品も棚に並んでいた。中国語系の左翼雑誌だ。「獲得的世界」というタイトルだった。このタイトル、獲得的世界の、響きというか、ナイーブさが、とても面白かった。日本でもそういうスローガンはかつては一般的だったのだ。獲得的世界。元々は60年代くらいまでの流行のスローガン=イデオロギーだろうか。ちなみに僕は10代の頃は時代錯誤ともいえる異常なキャリアの経験を通過してしまった人間なので、僕もかつては獲得的世界のイデオロギーに馴染んだ生活を高校卒業してからしばらくしていたものだったのだが。なんだか懐かしさのあまりに気が遠くなるような台詞に触れてしまった。しかもここはチェルシーの真ん中じゃないか。

先日ニュースで出ていた、いま一番世界でマンションの価格が高い場所というのもマンハッタンらしい。しかしこの広いスペースは一体何故確保されているのだろうか。誰かセクトパトロンでもいるのだろうか。あるいは大昔からそこを占拠してるから全然大丈夫なのだろうか・・・そんなことを思ったものだ。・・・しかしNYには別にこの極端な左翼書店に限らず、ちゃんと時代の流れに沿った普通の左翼系書店も他にちゃんと存在している。この店は極端な店ではあるに違いないのだが。

アメリカでマオイズム系のコミュニズムが一定生き残っているのは、中南米との絡みがあるからだろう。特にNYの場合はそういう場所からの訪問者も多いはずだ。しかしこの本屋の面積は広いです。感じとしては新宿の模索舎にも外見は似ているのだが、模索舎の5倍以上の広さはあると思ったな。