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1.
「それで究極さんは、昨夜いったい何処にいたんだい?」
「ぼくかい?。。。ぼくは、だから。。。エンパイアステートビルに行っていたよ。。。」
「なんだ。本当にエンパイアステートビルまで行ったんだ。それで。。。深夜のエンパイアステートビルに、何かいいことはあったのかい」

「そうだ。。。ヤクの売人に話しかけられていたよ。マリファナかな」
「それで?」
「もちろんそんなもの買う金はもう残ってなかったよ。ただその売人のお兄ちゃん、イタリーかスペイン系なのかな?兄ちゃんと話してたら時間が少し潰せたよ」

「なんだ。それだけかい?まるで没落している白人階級に深夜のレッスンを聞いていたというようなもんだな。エンパイアステートビルの地上にはこの国のプライドをしっかり証明できるものは見当たらなかったのかい?」

「この国のプライドか。。。それはとても地べたからは見れなかったな。想像もつかなかった。。。それはどこで見れるんだ?。。。」



2.
「けっきょくアメリカという国に相応しいようなプライドが見出せないのかい?そうだ。僕らはそういえば念願のスクワットハウスにもここニューヨーク・シティで辿りつけなかったね」

「そうだなあ。。。スクワットハウスか。。。ベルリンの時にはもっと簡単に見つかったんだけどね。でもきっとこの都市の何処かには、あそこと同じようにアナーキストたちが群居していて彼らの奇妙なライフスタイルを常時発明しているような、そんな場所があるはずなんだが。。。少なくともぼくはそう信じているよ。。。」

「なんだ。。。やっぱりいざという時にはアナーキスト頼みが最も親近感あるということかい。」
「ちょっとしたアイロニーかな。ぼくらがそんなにアナーキスト達に助けてもらう術を心得ているというのは」