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チャイニーズの遅めのランチを終えた後、僕らはまたチャイナタウンから歩き出し、マンハッタンの賑やかな街の方向へと歩き出した。空はよく晴れていたが気温はずっと低く、風も強く、少し歩き出してきつくなりそうだったら、ところどころモグラの穴ぼこのように地味に控え目に開いている地下への入口を潜り、地下鉄を乗り継いで、この島の中央の方角へと、チェルシーの方角へと、散歩の気分を失わないまま進んでいった。何かアンダーカルチャーか左翼的な交流のスポットのような場所を、僕らは飯塚くんに案内してもらいたいと思っていたのだが、それで飯塚くんが連れて行ってくれた場所とは、チェルシーの繁華街からちょっと通りを奥まった所で、アングラ書店のような趣で店の看板を出していた左翼系専門の本屋だった。店の入口には漢字で革命書店と書かれて出ている。そこは入口は狭いものの、店の入っているビル自体はそれなりに大きな建物だったので、狭い入口に対してずっと奥に広いスペースが縦長に続いているといった奇妙な本屋だった。ビルの天井は高く、古くて白い蛍光灯の光が、なにか時代錯誤感のようなものも伴いながら、古本のように高く積まれた本棚を上から照らし出していた。入口から少し入ったところにはソファがあり、人々が寛いで交流できるようなスペースが開けている。横には古くて小さな黒いステレオラジカセが置いてあり、カセットテープで流している音楽はやはり古い音楽には違いなく、ボブディランのファーストかセカンドかと思わせるようなフォークソングまがいの古臭いロックンロールが小さなボリュームで流れていた。この時期のディランの声は余りにも若すぎると感じるだけなのだ。