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上空を見上げると壮絶な程に色は青く、身を切るように冷たい風の吹きすさぶマンハッタン島の一角でチャイナタウンだが、アジア系の顔をした人々はこんな風の冷たさなど物ともしないというように、よく動きよく働きまわっているものだ。この落ち着きのない労働力、労働意欲の動物的な活力をもって不思議にアジアという系の人間の強さを、ここアメリカの土地の上で印象づけているような気さえしたものだ。アジアの人々とは動物的な程にも何も考えずよく働く、それはまるで猪突猛進の様のように。このチャイナタウンの一角にあって郵便局らしきものは少し見渡すとすぐ見つかった。ポストオフィスの看板を掲げる建物とはここの町並みと同じく、古く石造りで昔からそこにあるような建物だった。チャイナタウンだからといって特に大きくもない、むしろみすぼらしい位に投資とか建て替えとかそういった配慮とは無縁でずっとそのまま時間が止まったように放置されていたという感じの建物だが、かといってその古い郵便局は確実にここのチャイニーズ系達のニーズを受け付けていて、こまめによく使い込まれて生きているポストオフィスだという空気は保っていた。中に入るとその石造りのポストオフィスは、昔は教会にでも使われていたのではと思わせるような作りであって、古い小さな教会から椅子を全部取り払ってしまって、前のところに数カ所の窓口を開けて設けただけといった、天井だけはちょっとした高さを感じさせるような建造物だった。昼時ということもあってか前に窓口は一つしかあいておらず、照明は節約したように暗くした室内で、利用者たちは立って行列を作っていた。ニューヨークとはいえこのせこせこと人を並ばせて狭苦しく窒息するような窮屈さを与える人の扱いというのが、アメリカに生きる中国系の人々の微妙な扱いを示しているようだ。しかし中国の大陸系であっても台湾系であっても、自国に戻れば彼らは全く同じ様な、あるいはもっと酷いような人間の窮屈な扱い方と行列の作り方には、慣れているはずだった。究極さんは一枚のポストカードを、日本で待つトミーに向けてそこから送るために、行列に並んでいた。僕らはとてもそんな窮屈そうな行列に並ぶのは、ニューヨークにおいてまっぴらなので、室内の隅から並んでいる究極さんを眺め、郵便受付の作業が終わるのを待っていた。この土地の上にあって、中国人たちはとても忙しなく、落ち着きがなかった。