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どうやら翌朝ニューヨークの空はよく晴れていたようだ。

堅い床の上で数えきれない程の寝返りを打った挙句、気がついた時にはそれなりに気持ちのよい朝を迎えていたのだ。究極Q太郎は先に起きていて、冷蔵庫の中を開けて調べていた。だだっ広いフローリングの床のスペースは、表向きは全面窓があって通りの方へ面しており、朝の光を受けていて、それと逆にフロアの奥の方には、そのままダイニングキッチンがついていてシステムキッチンの隣には大きな冷蔵庫が控えていた。他人の家の冷蔵庫を勝手に開けていることには、何か後ろめたい気持ちもするが、決してここの住人に迷惑がかからない程度に、軽く僕達がお世話になれるような小さな領域があるのか、究極さんは確かめていたといったところか。

「おはよう。究極さん。何か僕らが食べてもよさそうなもの、その中には入っているかい?」
起き上がって静かに彼の背後に近寄っていった僕は尋ねた。

「ああ。おはよう。村田さんと飯塚くんはもう帰ってきてるよ。そっちの部屋で一緒に寝てるよ」
そういって究極さんは、顎で窓際にある、村田さんのプライベートルームの方を指して示した。

「ああ。そういうことか。」
僕は大きな欠伸をして答えた。

「パンとかケロッグとか牛乳とか。そういうものがあれば自分で調理して後で村田さんに報告しようか」

「うん。あと、村田さんが自分の店から持ち帰ってきたものだと思うけど、居酒屋で出すような、魚の煮付けとか、おでんとか、そういうのも適当にパックに入ったものがあるよ」

「それは嬉しいな。腹すごく減ってるよ。すべては事後報告ということにして、僕らの空腹をここは助けてもらおう」

朝日のキラキラ照らす室内で、僕らは遅めのブレックファーストを仕込んでいた。村田さんと飯塚くんも起きだしてきたのは、昼過ぎだったが、それまで僕らは部屋の中でテレビを見たり本を読んだりしながら静かに過ごしていた。彼らが目をこすりながら起きだして、中央の部屋に出てきて、シャワーを浴びたり身支度を整えたりとザワザワしばらくした後で、今日一日の行動予定について話し合った。飯塚くんを中心にしてマンハッタンを案内してもらおう。とりあえず、チャイナタウンでランチをとって、チェルシーの方にでも出てみようかと。