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川岸の強い風が吹きつける公園で写真を何枚か撮っていた。究極Q太郎が、飛行機に乗る前に日本のコンビニで買っておいたインスタントカメラ、使い捨て用のカメラを使って撮っていた。太陽からは鈍い陽射しが斜めに低く差し込んでいた。太陽の光と直接向き合うことを避けるようにして、僕らは構図を作った。太陽を背にして僕が立つ。公園のフェンスの上に腰掛ける。フェンスの下はすぐに川から海に連なっている。背後には波がコンクリートの河岸に当たっては砕ける音がちゃぷちゃぷと聞こえている。強い風が吹く中をしばらくそのままの体勢でこらえていると、究極Q太郎がシャッターを切ってくれた。太陽の光の差し込む向きとは逆から影の中に入るようにして撮っているので、きっとそれはうまく撮れているはずだ。究極さんは、写真のことなら撮り慣れている様子だ。周囲の写真も何枚か撮ってから僕らはグラウンドゼロの広場に戻った。広場はビルディングで丸く囲まれている。広い円形の空間が、工事現場の窪地を中止にして出来上がっていた。ビルディングを背にして風がそこでは遮られている。静かな広い空間の中を、工事中の音が規則的に響き渡っている。歩きながら顔を上げて天を仰ぐと、ビルディングとビルディングの合間には丸く、天空の青空が切り取られて見えている。白い雲は薄く空にかかり、空の青色だけは、普遍的な揺ぎ無さで上に抜けている。工事現場の金属音が響き渡り、上をただ仰ぎ見て歩くと、ちょっと眩暈がするようだ。空の上の遥か青色を眺めながら、くらくらとしてくる。そんな仕種をやっている僕を、気が付くと横の究極Q太郎は面白そうに眺めていた。高いビルディングが作る大きな日陰の中に、バス停があってバスは数台止まっていた。僕らはバスに乗り込み、他に乗客は少なかったが、前の黒人の運転手が、リズムを取るようにしてバスを動かしだすのを確認した。

昼下がりの静かな空間から、マンハッタンの街が空に向けて放っている目に見えない喧騒へとむけて、バスが動き出した。