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僕らは途中のターミナル駅で村田さんと別れ、軽くマンハッタンの街を散歩しながら次の宿を探すこととなった。僕らがまず向かったのは、グラウンドゼロの地だった。911事件の災難に見舞われた地とは、地図で確認するとマンハッタンの南の端のほうにあり、少し隣にはウォール街も控えているような場所だった。

ワールドトレードセンターの駅とは今でもそのままの名称で残っていた。この駅は一回事件の時には上から押し潰されているので、新しく再建されたものだった。まだコンクリートと塗装の匂いも新しいし、広々とした通路をもった駅で、今でもやはりまだ、それ系の金融的な経済の上層的な仕事で働くビジネスマンのような人々が多く、忙しげに行き交っていた。

ニューヨーク市にしては設備のとてもよいこの駅で、エスカレーターの流れに乗って、僕らは地上へ出た。グラウンドゼロの地が目の前に広がっていた。それは思っていたよりもそんなに広い土地の面積ではなかった。地下が大きく抉られたその土地のスペースは、一番下の基礎から丁寧に厳密に新しい建物を再建するために、厳粛な工事が行われていた。駅から出たすぐの場所には、金網がかけられ、目の前には献花された花々が供えられていた。深く抉られた工事中の土地は四角く周囲に金網がかけられ、その底にはクレーン車やショベルカーが動き、ゆっくりと再建の工事が進行中だった。そこは、思い込んでいたよりはそんなに広くはない建築の為の敷地だった。