インターネットの中の恐るべき閉域

インターネットは、資本主義的な情報の流通にまつわるあらゆる条件というのを、それ自身の中に巻き込みながら高速度で回転し一気に展開を遂げた。その急速な進化の過程では、表の側面としては、商業的な電子取引の遠隔的かつ利便的かつ迅速的な実現、広告的媒体としての実現、教育システムの遠隔的実現でありかつ合理化など、様々なる社会的な達成を現実のものとした。

しかし同時にその裏面では社会体にとっての裏の側面、詐欺行為や暴力的な脅迫、ポルノ的な次元のアナーキーな流通、裏風俗的な人間交流の媒体性、嫌がらせや悪事の方法論的な発展など、裏社会から悪徳にいたる人間性の部分も多いに巻き込んで、それ自体が人間の歴史的な社会的なシステムの達成の正確な鏡像としても、ヴァーチャルに電話線を中心に媒介された独自世界を発展させるに至った。

もはやインターネットの次元とは、社会の根幹的な一部分である。資本主義的な回転の中心はその情報的な交差点の中核として、インターネットを媒介にせずにはならないものとなっている。しかし現在社会問題となっているのは、インターネットの特性や利便性を逆転用した形での、それ自身の悪事悪徳としてのネット的テクノロジーの侵攻の問題なのだ。

インターネットは自由なコミュニケーション、情報媒体の場所という前提で、社会的な保護もあいまってそれ自体はここまで進化してきた場所だった。しかしそのような自由性を逆転させて、それ自体が悪徳の独自な技術的展開の発展場と化している。そのようなインターネット犯罪の側面とは、もはや一般社会的にも無視できない規模のものとなっているのだ。

インターネットで悪事や詐欺行為やデマゴギーの誹謗中傷の流布が起きた場合、まずそこに取締りや抑止がかけにくいメカニズムとは、ネットが匿名性のネット内行為、書き込みやメールの流通などを可能にできるという性質に巣食っている。

一定インターネットの進化過程でネットのこの性格、つまり匿名の表現を自由にする次元が同時に匿名の犯罪を可能にしているという事情が明らかになったところで、警察的、司法的、国家的な管理の側からも、まず情報の発信出所については、それを警察権によって強制介入させれば、明らかにその場所と証拠を示せるような体制を、サイバースペーシング専門の対応として整えることができるに至ったという事情が一つある。

しかし犯罪としてまだ決定的なものでなく、微妙に悪質なデマゴギーや誹謗中傷、詐欺行為を含む次元、つまりそれが明らかな大企業などのそこそこに対応しうる力も資金力も兼ね備えた対象ではなくって、一般人のレベルに向けたそれも無名の一般人的なレベルからなされる執拗な悪事、名誉毀損、詐欺行為のレベルとは、まだ相変わらず、そこにどのような対応しうるセキュリティを入れてよいのかが警察権や体制の立場からも考えあぐねられているプロセスなのだ。

決定不能性に身を隠したともいえる微妙なる隠微な悪の次元を大量に引き受けることのできるシステムというのが、日本のインターネットにおいては自然発生的に登場するに至ったのだ。すなわちそれが「2ちゃんねる」という匿名掲示板の複数横断的連鎖を可能にした情報交差点的なサイトである。

2ちゃんねるは、その匿名主義を中心にした書き込みのシステム(いわゆる「名無し」制が中心である)、名無しであるが故の書き込みの気楽さ、自由さを最大限に引き出すことによって、一気に大量のネット内の亡霊的な匿名の書き込みの欲望を引き受けるに至った。それはまたたくまにサイト自体の急速な自己拡大をもたらした。